インヴァースの輪舞曲
慎重に。相手を刺激しないように。
……交渉が始まる。
「レイアーゼ防衛機関管理下──第四正義部隊フォーエス部隊は我が国レイアーゼの誇る防衛部隊です。数々の功績を残し多方面から過大な評価を受けています」
ルフレは語り出す。
「ここまで築き上げられたのは彼の多彩な活躍があってのものと見て間違いありません。我々も、その能力を認めています。それを今更彼の意思とは別途に易々引き渡すなど共に戦った仲間として──出来るはずもありません」
「引き継ぎの話ではなく彼以外に同じ役は担えない。彼が隊長の座を降りるというのならもう二度と世間から好意的な評価は受けられないと見てもいいくらいだ。彼以外に隊長は務まらない」
マークはハッキリと言い切った。
「ロックってそんなに凄い人だったの?」
「あんたは黙ってろ」
感心するロールをブルースが睨んだ。
「そうか」
ライト博士は小さく息を吐いた。
「……君たちは。それがあの子の本心ではないと思わなかったのか」
マークとルフレは僅かに目を開いた。
「あの子は今までもこれからも家庭作業用人型ロボットの"ロック"だよ。やむを得ない事情があって戦闘用に改造したが本当は戦うことを望んでいない。心の優しい子なんだ」
「、それはっ」
「ルフレ」
マークが止める。
「ずっと嘘をついている。自分にも周囲にも」
ライト博士は淡々と。
「もう終わりにしてあげたいんだよ」
これは。
「そうだろう」
思っていた以上に。
「……ロック」
骨が折れそうな相手だ──