インヴァースの輪舞曲



ああも変わってしまうものなんだな……

「……それで」

溜め息を吐く音。

「どう策を講じるってんだよ」


フォーエス部隊の面々は食堂に集まっていた。電気代の節約の為か消灯時間が近いからなのか否か今は必要最低限の電気しか点いていないその場所は当然昼間や夕方の所謂食事時における賑やかさは欠片も見られずそれも相俟って皆口を開くのも憚られるようで静けさばかりが渦を巻く。

「急かしたって仕方ないだろ」
「明日なのに?」

パックマンが言うとリヒターは口を噤んだ。

「相手は一般市民だろう」

シモンは腕を組みながら息をつく。

「……そこなのよね」

マークと向き合うようにして椅子に腰掛けていたルフレは密かに眉を顰めた。

「悪意がない以上私たちは強く出られない」
「あれだけ強気に出ておいて?」
「じゃあお前は何か名案でもあるのか?」
「……無いけど」

詰まる所手詰まりといったところだった。

ロックマンの発言が確かなら話は通じるだろうが交渉に応じて引き下がってくれるものかどうかはまた話が別となる。もしかしたら此方が仕事以外で一般市民に対して強く出られない立場であることを利用して不利になるような発言や行動を起こしてくる可能性だって。どれもこれも推測に過ぎないがどうもプラスに考えられない。

「何処に行くんだよ」

ふと扉を開いて食堂を出ようとするリドリーに気付いてケンが声を掛ける。

「考えもなしに全員が全員ここに居座ってたって仕方ないだろぉが」

リドリーはじろりと視線を返して。

「明日に備える。それだけだ」
 
 
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