インヴァースの輪舞曲
……信頼されているんだな。
それと同時に愛されているのだと思った。
「脅しのつもりはないけれど」
ベヨネッタはそれまで口に咥えていたロリポップをゆっくりと抜き取り小さく息をつく。
「貴方が抜けるのなら私も正義ごっこはお終いにするわ」
否定的な意見が飛んでくるよりも先にベヨネッタは「でもね」と続ける。
「だからこそ最善を尽くすわよ」
「……そうですね」
「皆が同じ意見だと思う」
安心したように微笑するカンナに続いてその隣のカムイが深く頷く。
「私たちは諦めません」
ルキナは胸に手を置きながら進み出る。
「例え貴方が諦めていたとしても」
「策を講じよう」
「ええ」
マークとルフレが口々に言ってルキナの隣にそれぞれ並べばルキナは頷いて応えた。
「お前たち……」
「隊長」
続けて口を開いたのはハルである。
「あまりこんなこと言いたくなかったけど」
彼は終始無表情、感情のこもらない瞳で。
「それって"毒親"だよね」
……毒親?
「だろうなあ」
ドクターは困ったように言って腕を組む。
「そう珍しくもない話だよ。少しでも自分の認識とずれればヒステリックを起こした上でイメージを押し付けて成長や変化を妨げる。もちろんそればかりではなく普段は変わらない態度できちんと愛情を持って接するから見た目には普通の親と区別が付かない。隊長の心理状態から察するに結構深い所まで毒されてるよね」
心臓が胸の内側で軋んだ音を立てている。
「……怖いんだよね。隊長」
ハルはロックマンの手を取って。
「分かるよ」
節目がちに語りかける。
「……ぼくも。そうだったから」