インヴァースの輪舞曲
心臓がうるさい。
「嫌、……なんだよね?」
ロックマンは黙っている。
「僕だって、こんな形でロックマンとお別れするなんて絶対に嫌だよ」
「ありがとう」
力の込められていない声に。
既に全てを諦めているものと察する。
「博士のことは嫌いじゃないんだ」
何を言われるより先に遮るように口を開く。
「父だと言っただろう。家族なんだよ」
ルーティは込み上げてくる感情に瞳を揺らす。
「家族なら──嫌われてもいい覚悟で」
「何度も試した結果だよ」
「明日だって試せばいい」
「あの人の失望する声や目は」
もう。
「ロックマン……」
どんなに詰め寄っても揺らがなかった。
ああきっとこの人もこの人で捉われてしまっているんだ。父と慕うその人が抱いている固定概念というものに応えなくては、と。
そのために殺そうとしているんだ。
本当の自分を。
「ロックマンは……それでいいの?」
沈黙そのものが答えだった。
ルーティは眉を寄せて顔を背ける。
「……分かった」