インヴァースの輪舞曲
ふと、思い出したように。
「ロックマンって」
ルーティは訊ねる。
「博士の前では"ぼく"って言ってるの?」
それは。
限りなく的を射ていたようだった。
「……ん」
想像していたより小さな声が返ってきて。
「猫被ってるとか」
思わず質問攻めになってしまう。
「ロックマン」
「……概ね想像してもらえている通りだよ」
その瞬間。
別の意味で心臓を騒ぐのを感じて。
「そんなの」
ルーティは食い入るように。
「父親なのに」
「──父親だからこそッ」
ロックマンは遮るように言葉を吐く。
「裏切るような真似は……したくない……ッ」
こんな。
……辛そうな顔。……初めて見た。
「博士にとって俺は家庭作業用人型ロボットの『DRNー001ロック』であって戦闘用ロボット『ロックマン』じゃない。人とロボットの双方を愛する心優しい性格であって自ら進んで戦う事を望む正義のヒーローなんてものじゃない……」
ルーティはそんな、と小さくこぼして。
「ロックマンはロックマンだよ!」
「──何度だって認めてもらおうとしたさッ!」
訴えを弾き返して顔を顰める。
「けれど──その都度博士は俺の人格そのものを否定した。戦いの中に身を置くことで、優しい心を忘れてしまったのだと。だから早く研究所に戻ってきてこのカラダも家庭作業用人型ロボットに"改良"をしてまた一緒に暮らそうと」
ルーティは驚愕する。
「じゃあ、……明日その人が来たら、……」
ロックマンは。
「……想像にお任せするよ」