インヴァースの輪舞曲
ルーティは驚いた。
「じ、自分からお願いしたの?」
確かに彼らしいといえば彼らしいけど。
「あの時は酷く怒られたよ」
ロックマンはくすくすと笑う。
「でも状況が状況である以上やむを得ない判断というものだった。結果渋々改造を施してもらえたお陰で俺は晴れて戦闘用ロボットに昇格さ」
本当は戦いたくなかったんだ。
「というのは表向きの話」
え? ルーティはきょとんとする。
「見ての通り正義感だけは人一倍でね」
ロックマンは自身の胸に手を置きながら。
「生み出されたその時からずっと──ずっと戦いたくて仕方なかった。悪を討ち滅ぼすだけの力が欲しかった。テレビや新聞で誰かの活躍を見る度"自分ならもっと上手くやれる"と思っていた」
そうして伏せた瞼を。
徐ろに持ち上げながら振り返って。
「ルーティ。俺は」
暗闇に浮かぶ静寂の青。
寄越された視線に合わせて夜風。
「正義のヒーローになりたかったんだよ」