インヴァースの輪舞曲
仕事熱心で隙がなくて。誰よりも正義に強い拘りを持って忠義の全てを尽くすその一方で抱いた信念は他者に絶対折らせない立ち回りで積極的に時として残酷に正面から迎え討つ。そんな超人とも呼べようその人が節々に窺える苦手意識というものを持って押され気味であるというのがどうにも不思議で違和感を拭えなかった。
「……父だよ」
ルーティは少しだけ目を丸くして、
「ロックマンを作った人ってことだよね」
「そう。……」
トーマス・ライト。通称ライト博士。
人間とロボット──二つの生命が平和に共存する世界を望んでロボット研究に没頭した結果、後に主流となる全ての人型ロボットの基礎を作り上げ『ロボット工学の父』と呼ばれるまでの伝説的な科学者となった人。
俺はその人に生み出されたんだ。家庭作業用人型ロボット『DRNー001ロック』として。
「凄い人なんだね」
ルーティが言うとロックマンは笑いかけた。
「俺にとっても誇りのある人だよ」
こうして話に聞いている限りではどうもロックマンがその人に対して嫌悪感を抱いているようには見えない。ルーティは更に話を詰める。
「家庭作業用人型ロボットってことは最初の頃は今みたいに戦えなかったってことだよね」
ロックマンは小さく笑う。
「察しがいいな」
「無理矢理改造されたの?」
「まさか」
静かに首を横に振って。
「志願したのは俺の方だよ」