インヴァースの輪舞曲
夜風が柔らかく吹き抜ける。
「ここにいたんだね」
不自然な影を落としていた正体に後ろからそっと声を掛けるとその人はゆっくりと振り返った。
「ロックマン」
まさか屋敷の屋根の上に居るものだとは思いもしなかったが確かに一人落ち着くには最適な場所だと思う。やむを得ない事情があるとはいえ人数が多いばかりに何処に足を運ぼうが人がいる。こうして一人になれる場所は貴重だっただろうから。
「ご飯はちゃんと食べた?」
「……ああ」
明らかに元気がない。
「生姜焼き定食を頂いたよ」
「あれ美味しいよね」
ロックマンは屋根の平たい場所に片膝を立てて座っていた。ルーティは自然を装ってその隣に足を運び両膝を立てて座る。
「朝ごはんはパン派? ご飯派?」
「……あまり食べないな」
「ゼルダの作るフレンチトースト美味しいよ」
ルーティが笑いかけるとロックマンは笑みを零したがそれも何処か憂いを帯びていて。
「……検討しよう」
「うんっ明日──」
明日。
「……ねぇロックマン」
ルーティは声のトーンを落として訊ねる。
「明日……その、博士って人と何かあるの?」