インヴァースの輪舞曲



……叫び声のようなものが聞こえた気がする。

「あらルーティ」

廊下を歩いていたその時だった。

「リム」
「まだ髪が濡れているわよ」

ルーティはあっ、と声を洩らして苦笑。

「す、すぐに乾くよ」
「自然乾燥じゃなくて乾かすの!」

手厳しい。

「そっそうだ」

ルーティは話題を逸らすべく人差し指を立てる。

「ロックマンを見なかった?」
「……ロックマン?」

リムは顎に人差し指の背を当てながら。

「そういえば……外に出る所を見たわね」

外。ルーティは意を決する。

「ありがとうリム!」

そう言って駆け出すルーティにリムは遅れて気が付くと腰に手を当てながら膨れっ面。

「ちゃんと髪を乾かしなさい!」


正面玄関の扉を開いて外に出ると思っていたより冷たい風が吹き抜けた。髪は乾くだろうがあまり長居をすれば風邪までひいてしまいそうだなと思いつつも後ろ手で扉を閉めて辺りをゆっくり見渡す。昼間とは打って変わって空っぽの中庭には静寂が満ちていて何となく不気味な雰囲気を感じてしまいながら一歩二歩と進み出れば。


ふと。

月明かりに照らされた屋敷の影の中に。


不自然な出っ張りを見つけて。……
 
 
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