インヴァースの輪舞曲
首を突っ込んでみてもいいものだろうか……
大浴場から出て脱衣場で私服に着替えたルーティはタオルで髪を拭きながらぼうっと考え事をしていた。何かあるというのは明白だが今のところそれを確信しているのは自分だけでフォーエス部隊の誰も気付いている様子はない。もちろん多少なりとも違和感くらいは感じているのかもしれないが突っ込むほどでもないと思っているのか話題に聞かないし振られもしないのが現状。
「入らないので御座るか?」
声に釣られて振り返ってみれば脱衣場の入り口横の壁に腕を組んで寄り掛かるネロにミカゲが怪訝そうに話しかけているところだった。
「お……俺はいいんだよ」
ネロは眉間に眉を寄せて固く目を閉じながら。
「音とか匂いとかで……入った気になってるし」
「お前なぁ。後輩の前でくらい頑張れよ」
ソニックが呆れたように目を細める。
「拙者てっきりギャグかと」
「俺は本気だッ!」
「余計タチが悪いだろ」
漫才のような下らないやり取りにルーティは外野側でありながら苦笑い。
「おーい。そろそろ出ぇやぁ?」
脱衣場に顔を覗かせたのはドンキーである。
「次は女性陣の入浴時間ですよ」
続けざまリンクが言うと脱衣場でのんびり話したり髪を乾かしていた面々がどたどたと忙しなく足音を立てながら移動を始めた。ルーティも急いでタオルを洗濯籠の中に放ると集団に紛れて退散。リンクは短く息をつくと腕捲り。
「さ。掃除しましょうか」
「数が増えると忙しゅうて敵わんわ」
ドンキーは肩を回していたが。
「うぉあっ!?」
まだ残っていたネロに気付いて飛び退く。
「びっくりしたわぁ早よ出ぇや!?」
「……まだ風呂入ってねえし」
「見れば分かりますよ」
いや、と。ネロは首を横に振って顔を上げる。
「頭の中の俺が……」
「そんなん十年先もここにおるやろ」
「馬鹿なこと言ってないで済ませますよ」
「なっ、やめろバカ俺は──ぎゃああぁあ!?」