インヴァースの輪舞曲
初めて会った時から思っていたことだけど読めない人だな──ルーティは何も応えないその人にぎこちなく頭を下げてからバトルルームから小走りで抜け出す。通路に出ると遠く子供たちの遊ぶ声や剣士たちの掛け声が聞こえて日常を感じた。続いて右と左を交互に見たが既に姿はなくどちらに行ったものか分からない。
見失ってしまったかと落胆していたその時。
「、分かっています」
微かに聞こえる声を頼りにルーティが左を向けば曲がり角でちらつく影を見つけて。
「……でも」
何だかあまりいい雰囲気ではなさそうだ。近付くにつれてその声がよりはっきりとロックマンのものと認識出来るようになりルーティは司令塔から何か難しい案件を突き付けられているのではないかと予想した。であれば黙って力になるのが先輩部隊というものだろう。
「、博士」
ルーティは疑問符を浮かべて足を止める。
「──ぼくはッッ!」
……え?
「!」
気配を察知して顔を上げたその人が顔を合わせるなり目を丸くした。ルーティ、と小さく呟いたその人の手の中の端末から微かだが話し声が聞こえてくる。ロックマンはゆっくりと端末を耳に当てると静かな声で二言三言交わして。
「……分かりました」
ロックマンの一人称って。
記憶違いでなければ"俺"じゃなかったっけ?
「はい。……じゃあ」
なのにさっき。
「……お待ちしています」