インヴァースの輪舞曲



──バトルルーム。

「……すっご」

ぽつりと零したのはカービィだった。人数に対し室内はまるで水を打ったような静けさで誰もそのモニター画面の映像に釘付けになっている。

皆が皆が同じことを思ったことだろう──これが彼の実力なのかと。モニター画面の中で相手二人のMiiファイターを前線を張って往なしているのはロックマンである。相方のマックはというと体勢の崩した相手が地面に叩き付けられたその隙を狙って攻撃を打ち出すだけの後処理係。そんな言い方では聞こえが悪いが実際その通りで地上戦を最も得意とするマックの一撃を恐れて飛び回る相手二人をロックマンが攻撃を下し地上に運んでいるのである。

彼の隙のない洗練された動きは火を見るより明らかでその証拠に彼のダメージ蓄積パーセンテージは相手のストックを既に二つずつ削っているにも関わらず二十パーセントにも満たない。


何が起こっているのか──


「はは」

乾いた笑いを零したのはリヒターだった。

「これは俺の頭が悪いのか?」
「……いや」

隣で眺めていたシモンは瞼を閉ざす。

「私も分からない」

画面の中で繰り広げられている試合はロックマン達のチームが圧倒的有利なまま早くも終盤を迎えようとしている。ふとルーティが目を向けるとルフレとマークが肩を寄せ合って話していた。軍師である彼らには何か見抜けただろうか。そうして誰も空気に呑まれて目を見張る中で遂にモニター画面から奏でられていた戦場の音が途絶える。


ああ。

分かりきっていたはずなのに。


内に疼く感情は。
 
 
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