インヴァースの輪舞曲



……朝。うぅん、と唸って瞼を震わせる。

今日は非番ということでアラームは掛けなかったが情けないことに空腹で目が覚めてしまった。複数回寝返りを打った後にベッドが広々としていることに気付きようやく瞼を開ける。

……同じベッドで眠っていたはずのウルフの姿が見当たらない。のそのそと上体を起こして寝ぼけ眼で向かいにある本来自分が使っているベッドをゆっくり振り返ってみたがロックマンもエンダーマンもそれらしき影もない。

ルーティは枕元に置かれた端末を手に表示された時間を確認する。……まだ九時。

ぐっと腕を上げて体を伸ばしてからベッドの縁に移動。欠伸をしながら今日は何をしようかと考えていたその時ふと足下に影を捉えて。まだ眠気の覚めきらない目を凝らせば。

「………………」

膝を抱えて終始無言の黒い影は。


「うわあぁあー!?」


──食堂。

「ったく驚かせやがって」

そう言うのはファルコである。

「ご、ごめん……」
「気にするなよ」

謝るルーティにフォックスが笑う。

「ええっと」

後ろから付いてくる影を振り返りながら。

「あまり驚かせたら駄目だぞ?」

あの時──床に体育座りをして見上げていた黒い影の正体はエンダーマンだったのだ。喋っているところを未だに見た事がないし噂によるといつの間にか寮に住み着いていたという前代未聞の新規枠の隊員らしいしUMAだという噂もあるしよく分からない。兎角驚き悲鳴に近い声を上げてしまったところをフォックスとファルコが飛び込んできてくれて現在に至る。

「……こいつ聞こえてんのか?」

注意を促すフォックスに対し返事はなし。よく見れば目隠しをしている。ファルコは眉を顰めたがこれでもリオンと同じで見えてるのだろうか……
 
 
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