インヴァースの輪舞曲



そんな真面目な顔で。真面目なトーンで。

どんな深刻な相談かと思えば。


「……素晴らしい……本当にここはいつ訪れても目を見張るものがあるな……!」


これだもんな。


「そ、そうかな……」

バトルルーム。

自分たちX部隊にとっては見慣れたものだが対するフォーエス部隊にとってはそうではない。寮にはもちろん司令塔にも近辺にある施設にも果ては何処にもこんな近未来型高性能システムは見たことがない。加えて一見して気難しく見えるこの機械も初見であれ子供であれ操作は簡単でそれほど時間も掛からずに楽しめるのだ。

そうして準備を進めて用意された円形のパネルの中へと足を進めれば現実の世界と凡そ区別も付かないバーチャル世界が迎える。そこで負った傷もどれだけ深かろうと致命傷に繋がろうと対戦を終えてしまえば瞬時に回復するという優れ物。


……とまあ。

このバトルシステムの"どんな傷を負っても対戦ゲームを終了してしまえば回復する"というトンデモ不思議現象は恐らく自分たちが創作者たるマスターの愛する模造品……いや──戦士ファイターだからこそ発生する仕組みなのだろう。そもそも戦士でも何でもない一般人がこのシステムを使うことが出来るのかどうか──試したことはないが推測の通りなら扱えないんだろうな。


……そんな風に思っていたのだが。


「うっわぁーい!」

パネルの表面に淡い光が灯ったかと思うと白く伸びた光が人の形を成しながら跳び上がった。続けざま同じパネルの中から中くらいの光と大きな光と──最後はまた中くらいの光が帰還。光は一秒二秒と待たない内に失せて正体を露わにする。

「トレーニングしてたの?」
「ぜーんぜん!」

ローナはふふんと胸を張ってみせる。

「我々はオンライン対戦を嗜んでいたのだ!」
 
 
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