井蛙の教訓
レイアーゼ中央司令塔外部にあるビルの屋上。
「、!」
スナイパーライフルを構えていたダークファルコは急接近してくる影に気付いて構えを解くとその一撃を回避した。砂煙を巻き上げてけたけたと嗤うそれは当然言葉が通じるようには思えない。だとしても単騎で向かわせるなんて嘗めすぎなんじゃない──? ダークピットは目を細めて黒金の神弓を構えて飛び出す。
「わぁお」
貯水タンクの上で足を組むクレイジーは突如として始まった激しい戦闘を眺めながら。
「やるねぇ」
場面は改めて司令塔七階通路に引き戻される。
「さて」
ロックマンは浮かべた笑みを失せて。
「今度の件に関わった連中は牽制済みだ。それでなければこの事態に駆け付けるのが此方側の用心棒だけであるはずもないからな」
紙をひらひらと揺らして。
「証拠も押さえたことだがどう挽回できる」
「……はは!」
男はたらりと冷や汗を垂れる。
「待機命令をお忘れかな!」
「成る程」
ロックマンはにっこりと笑う。
「……目撃者が居なければ話は別だろう?」
男はさあっと青ざめた。
正義の為に迷いなく制裁を下す彼がこの期に及んで冗談で場を和ませるなど。万事休すと銃を落として同時に男は腰を抜かせて座り込む。
「ぁ、あ……わ、悪かった、……悪かった!」
双眸に赤を浮かべた忍びの男は。
表情筋を一つとして動かさずゆっくりと。
「ああ、謝る、もう貴方たちとは関わらない、」
男は自身を庇うように腕を翳す。
「命だけは──!」