井蛙の教訓
銃声。全てはスローモーションに映り込む。
一方は前方から。そしてもう一方は視界の端窓硝子を突き破って外から──ロックマンを狙った二つの銃弾は次の瞬間真っ二つにされてその役目を強制的に下ろされる。舞い上がる透明な水の玉。その一方でその様子を見張っていたミェンミェンは窓の方を向いて待機していたエンダーマンの目隠しを腕を伸ばして取り払った。エンダーマンの体が揺らぎ能力が発動。
「ケヒッ」
双眸を狂気に染めて窓硝子を突き破って飛び出すエンダーマンが横切ったのは虚空に不自然に置かれた扉。開かれたと同時に吐き出されたのは一見して唯の紙屑──けれどそれに狙いを定めて遥か遠くからベレスが矢を放った。紙屑を巻き込んだその矢は中央司令塔七階通路で向き合う二人の間に割って入るように。窓硝子を粉砕して壁に突き刺さる。その間十にも満たない。
「……!?」
舞う砂埃に男は咳き込んだ。
「抵抗など」
ロックマンはゆっくりと口を開く。
「優位であればあるほど無意味だろう?」
男は目を見開いた。
ロックマンを守るように立ちはだかるのは。
水苦無を構えた忍び装束の──
「いや偶然だな」
ロックマンは壁に突き刺さった矢の下に転がった紙屑を手に取って広げながら。
「君が今度の事件の首謀者だという証拠が偶々、手に入ってしまった」
紙を返して見せ付けられたそれは紛れもない、処分した筈の有償の依頼届。電子サインが施されている以上は言い逃れが出来るはずもない。