井蛙の教訓



男は引き金に指を掛けようとする。

「今ここで撃てば疑いをかけられるのは君では」

ロックマンは冷静に訊ねた。

「はは! このような状況に陥ってまで他人の心配とは貴方らしい!──心配には及ばない。証拠と呼べる証拠は全て抹消してある」

男は口元に笑みを浮かべながら。

「今回の事件で狙われたのはこの僕だ。貴方は僕を守ろうとして殉職する。大好きなヒーローの肩書きはそのままにこの世を去れるのだからこの上ない名誉だろう?」
「随分な自信だな。仕留められるとでも?」
「──ここで必ず仕留めきる」

そう言って男の表情は険しさを増す。

「父の会社が倒産したのはお前のせいだ。お前の身勝手な正義で一体これまで幾つの命が犠牲になったと思っている? ただの気まぐれで振り翳した正義で命を捌いた数を、数えてもいないお前をこれ以上生かす道理はない!」

男が発砲するとロックマンは即座に躱した。

「、っ」


……違和感。


「遅効性の毒か」
「その通り」

視界が揺らいで片膝を付く。

「神経を麻痺させる程度の毒だ。その程度では死にはしないさ」

男は一歩、進み出る。

「抵抗しない姿勢は褒めてあげよう。貴方の中であくまでも僕は一般市民ということだ」

ロックマンは黙っている。

「このまま死ね!──ロックマン!」
 
 
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