井蛙の教訓
ミカゲは再び視線を痛く感じて縮こまった。
「……ミカゲ。シャキッとしなさい」
「ひ、……ふひひっ……」
呆れたようにロックマンが指摘したところで対するミカゲはこれである。背筋を伸ばしたが今の彼は残念ながらオフモード。ぎらりと光る瓶底眼鏡に加えて口元の笑みとその笑い方では不安になるのも無理もない。
「実際、君たちが入隊するまで先程話したような仕事は全て彼一人に熟してもらっていた」
「ひ、一人で、ですか?」
しずえが驚いたように目を丸くする。
「本気?」
カズーイはまじまじと資料を見つめながら。
「達成率が九十パーセント以上って」
「ご理解頂けたかな」
ロックマンはにっこりと笑って未だ緊張している様子のミカゲの肩の上に手を置く。
「彼は裏世界を牛耳るエキスパートだよ」
しん、と静まり返った。
「よって。この秘密結社SPの代表取締役として正式に任命させていただいた。異論は無いな」
ミカゲは再び縮こまる。
「せ、……せ、拙者には」
「今日はその初日ということで軽い説明と引き継ぎも兼ねて俺も同席させてもらったが、次回からは本格的にSPに関する事項は全て代表取締役であるミカゲが責任を負うことになる。このようなSP隊員のみの会議も今後は彼が進行役を務めるので俺に連絡しないように」
鳩時計の音。
「以上。それでは解散してくれ」