井蛙の教訓
場面は引き戻されて──七階。
「ロックマン君!」
顔を上げて視線を寄越せば。
「……貴方は」
会議室での一件で居合わせた男がそこに居た。ロックマンはほんの少し目を細めたがすぐに笑顔で取り繕い会釈をしてその人を迎える。
「まさかこんな所で会うとは」
「こっちの台詞ですよ」
「自分は爆発の音がしたので此方に」
「怪我をしているのに?」
「職業病です」
そうして二人は笑い合う。
……何処か隔てたものを感じさせながら。
「ご一緒しても?」
「危険ですよ」
「怪我をしている貴方を放っておく訳には」
「はは。心配性な御方だ」
ロックマンは薄笑みを浮かべて紡ぐ。
「それとも。スナイパーの腕を信用されていないとか?」
空気の色が──変わった。
「嫌な冗談ですよ」
男は頬を掻いて苦笑いを浮かべる。
「──何故、分かったんです?」
化けの皮を剥がすのは思うより早かった。男は懐から拳銃を取り出してロックマンに差し向ける。
「鎌を掛けただけ──と言ったら?」
「成る程。貴方らしい」
男は鋭く睨み付けながら。
「……だが無意味だ」