井蛙の教訓
……暗い部屋の中。ブルーライトを浴びながらパソコンの画面と向き合ってキーボードを叩く男が一人。見落としがないか隅々まで目を走らせた後マウスを動かしてエンターキーを弾く。
「終わったか?」
大柄の男が歩み寄るとその男は振り返った。
「ったり前ェだろーが。誰だと思ってやがる」
レイアーゼ中央司令塔──十二階。
「相手さんが抜けてて助かったなリドリー?」
先程の大柄の男はキングクルールだった。わざとらしい煽りにリドリーはコピー機から完全に出てくる前に紙を引き抜きながら舌打ち。
「この俺が天才だから洗い出せたデータだ」
睨み付ける。
「勘違いしてくれるなよ」
後衛のブルーと一丸となり一度削除されているにも関わらずネットワークの海から捜し当ててもう一度現世に呼び戻したこのデータは間違いなく今回の事件の王手となる。依頼した本人は証拠を残らず抹消した気でいただろうに突き付けられたら目ん玉をひん剥くだろうな。
「違いない」
キングクルールはからからと笑う。
「だが時間は味方しちゃくれないぜ?」
「分かっている」
リドリーが振り返った、その時。
「、あれ」
にやりと笑う影。
「外しちゃったぁ」
──振り返ると同時に気配を察知。首を反らしたことで頬を掠めるだけに留まったのは紛れもない銃弾だった。リドリーの向けた視線の先で気を失わせたはずの事務員が口角を吊り上げていたがその姿はたちまち黒に呑まれ次の瞬間には本来の姿即ちダークフォックスの姿に。
「正義部隊さんさぁ? 上の命令で動いちゃいけないんじゃなかったっスかぁ?」
単騎であるはずもなく複数の視線を感じる。
「テメーらこそわざわざ大勢でお出迎えたぁ随分気合が入ってるじゃねえか」
「そりゃまあ勝ち確定演出入ったんで」
ダークフォックスは拳銃を構え直して。
「社会的にも肉体的にも葬り去ってやるよ」
攻撃を放つ。
「──正義部隊ッ!」