井蛙の教訓
警備員の男らは三日月目になって口角を吊り上げると自身の体を爪先から頭の天辺まで黒く染め上げた。刹那、殻を破り捨てるようにしてその黒染めの体を真っ二つに割いて飛び出したのはダークリンクとダークマルス。それぞれの剣を打ち払って襲い掛かればヒカリもセフィロスも先ずはその一太刀を躱すべくして飛び退いた。
「……オイオイ。誘っておいて逃げ腰かぁ?」
ダークリンクが剣を差し向けて挑発する。
「黙りなさい」
ヒカリは目を細める。
「いいえ。……黙らせるわ」
──次の瞬間。
「、ッ!?」
凄まじい爆発音が響き渡った。それまで片膝を付いて訝しげにカードキーを手に観察していたロックマンは慌てて立ち上がり音のした方向を見遣る。──爆発があったのはこの上の階層。まさか敵に襲撃されたのだろうか。
「なんだなんだ!」
近くの扉から男性警備員が飛び出してきた。
「、あなた……どうして待機していないの?」
追って出てきた別の女性警備員がロックマンに気付いて声を掛ける。
「馬鹿。正義部隊だぞ」
「いけない」
男に小突かれて女は口元を手で覆う。
「あら。そのカードキー」
気付いたように。
「あなたのじゃない?」
「ん?……ああ本当だ」
「お返しします」
ロックマンは男にカードキーを手渡す。