井蛙の教訓
レイアーゼ中央司令塔──六階。
「……ふむ」
一点の光も差さない暗い通路の中で塔内放送が不気味に響き渡る。塔内の人間は誰であれ必ずその場待機するようにとの指示──惜しくも医務室を後にして暫く歩いたところでこの停電なのだから図られたような気がしてならない。
あの時──狙撃銃による攻撃を受けたロックマンはその場に居合わせた事務員に連れられて医務室で治療を受けていた。所謂深手というものだが利き腕じゃないだけマシかもしれない──問題は何処から誰が、よりも何処の誰が指示を送ったかだがあの短いやり取りで彼がそれを理解して行動に移してくれているだろうか。
「、?」
自身の足音とは別の足音を耳に拾う。
振り向いたが──影は無く。
「危ない危ない」
ロックマンの背後に迫る怪しい警備員の男二人の首をワイヤーで捕らえて吊り下げるのは天井裏のリヒターとシモンだった。
「締め過ぎると首が切れるで御座る」
「シモンも緩めた方がいい」
傍らで指示を送るのはミカゲとジョーカー。
「B班、合流地点に不審な影を確認しました」
無線からブルーの声が聞こえる。
「ダークシャドウです。戦闘の準備を!」