井蛙の教訓



「──資料にもあるように。君たちSPには少しばかり難しい仕事を受けてもらう」

浮かべていた笑みを掻き消して語り出す。

「主に権力者の圧力によって深く追及出来ない事件や公にされていない事件が処理の対象となる。君たちだけの力で解決に臨んでくれても別段構わないが何せ解決を望んでいない──寧ろ事件の存在自体を揉み消そうとすら考えている連中が常時目を光らせている」

続け様。

「後先考えない生半可な立ち回りをすればそれ相応のリスクを伴うことになる仕事だ。よって連携が重要となる。有利な盤面に運んで貰えれば後は上長である俺たちが処理を引き受けよう」
「……牧羊犬ということか」

ジョーカーがぽつりと呟いた。

「ふむ。……政府の犬だ何だと罵詈雑言を浴びせられる場面も多々ある中で少しばかり虫の好かない表現となってしまうが──我々正義部隊が番犬ならその中でも君たちは猟犬や牧羊犬としての役割も担っていると考えて差し支えない」

ロックマンがそう言うと。

「犬だってー! かわいーねえ!」
「静かにしろって」

はしゃぐツツイをコウが肘で小突く。


「それで?」


ようやく口を開いたその人物にミカゲは汗が噴き出しそうだった。

「そいつが俺らのリーダーだって?」


リドリー。

元亜空軍というのもそうだが何より例の事件を引き起こすきっかけとなった男だ。本来であれば厳重な処罰どころではない──首を刎ねられても差し支えないほどの重罪なのにロックマンの手回しにより難を逃れた。どう話を運んで、それが丸く収まったのか今のところはこのフォーエス部隊に身を置いて大人しくしているようだが。


「彼自身の実績は資料の四枚目にある」

ロックマンは至って冷静に。

「読んでいないのか?」

首を傾ける。一方リドリーはじろりと睨んだが舌打ちをすると手持ちの資料を捲って。

「……、暗殺」

誰かがぽつりと呟いた。
 
 
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