井蛙の教訓
誰も声を上げなかったのはそれが然程驚くような事態ではなかったからである。自分たちの隊長の命が狙われているというのに皆が皆冷静であるのも可笑しな話だろうが彼の場合は正直なところ他より段違いで狙われやすい立場にある。正義の為に手段を選ばない振る舞いと立ち回りはこれまで一体何人の心を砕いてきたことか。
だからといって安易に考えて緩く構えるなんて筈もない──目の色を変えて思考を巡らせるミカゲを目にマークは同じく思惟していたシュルクの肩の上にそっと手を置いた。その後、パックマンと短く視線を交わして互いに頷く。
「最初の襲撃があったのは会議室」
リヒターが口を開く。
「武器種はスナイパーライフル」
続けざまシモンが状況整理に加担する。
「弾痕は二つあった」
「確かに……銃声は二回ありました」
しずえはうんうんと頷く。
「陽の出ている内から狙うとは」
ベレスは顎に手を添えながら眉を寄せる。
「……停電させた理由は?」
コウが疑問を口にする。
「逆に標的を間違える可能性があるよな」
「カモフラージュってやつだよー!」
「……それだけじゃない気がする」
ソラはぽつりと。
「リスクがデカすぎると思う」
「同意しよう」
セフィロスは閉じていた瞼をそっと開いた。
「相当な腕利きと見て取れる」
「腕利きだからって二発で当たるもんかね」
ケンは訝しげに。
「……可能性はある」