井蛙の教訓
そうして差し出された手のひらを。ミカゲは一度視線を逸らしたがおずおずと戻して──
「ロックは」
掴まれたその手に引かれる。
「歩み寄ってほしかったんだと思う」
マークは語る。
「最もらしい理由を付けているようで主な理由はそっちだと思うよ。元から意味のないことをするような人じゃないだろ?」
扉の隙間から漏れ出す光が近付く。
「不安なら」
ドアノブに手を掛ける。
「自分の目で確かめてごらん」
扉が開かれる──
「、あ」
通路には誰一人欠けることなく秘密結社SPに抜擢された隊員が揃っていた。集中する視線に忍び装束を纏いながらもオフモードであるかのように口籠って目を逸らすミカゲの前に腕を組みながら一人の少女が進み出て見詰める。
「ミカゲ・クアトン」
ルルトは静かに口を開く。
「気は済んだかしら」
小さく口を動かすも上手く言葉が出てこないまま視線をおろおろと彷徨わせてしまう。けれどそんな彼の背中を押すようにシュルクが肩に手を置くとミカゲはびくりと肩を跳ねて視線を遣る。
「す、……みませ」
「謝れって言ってんじゃないわよ」
呆れたような声が返ってくる。
「まずはこの空気をリセットする必要がありそうですね」
ベレスは小さく息を吐いて提案する。
「……ルルト。彼の頬を引っ叩きましょう」