井蛙の教訓
ロックマンに促されるがままに指定の席。途端に刺さる痛い視線。縮こまるミカゲを気にも留めないままロックマンは資料と称した紙の一枚を手に取りながら徐ろに視線を上げた。
「さて」
室内はしんと静まり返る。
「改めて自己紹介を──第四正義部隊フォーエス部隊の隊長を務めるロックマンだ」
資料を片手にゆっくりと歩きながら。
「第四正義部隊は一から五まである正義部隊の内の一つ。その中でも秀でて評価されているといっても過言ではない。君たちの先輩にあたる隊員の実績に関しては二枚目の資料を」
紙を捲る音が端々。
「天空大都市レイアーゼは有数の部隊を携えるだけに相応しい未来を担う国。それだけに悪の目に留まりやすく被害を受けたという報告も多数ある──均衡や秩序を保つべくして新たな防衛部隊が立ち上げられることもあるだろう」
ロックマンは立ち止まる。
「我々の部隊はその名の通り正義の為に尽くすことが絶対だ。レイアーゼの誇りこそ即ち正義──であるからには余すことなく加担する」
ひと息置いて再び歩き出す。
「資料にあったように今後の活動視野を広めるべく部隊の中に派生チームを結成した。それがこれから君たちの所属することになる秘密結社SP。SPは略称だが正称の説明は要るか?」
「さ、流石にそこまでは」
ミカゲがおずおずと口を挟んだ。
「はは。冗談だ」
笑顔で返したが放っておけば話が幾らでも派生しそうなものである。