井蛙の教訓
向いてない。やっぱり向いていない。
「ははっ」
ミカゲは顔を俯かせながら笑う。
「どうするって」
ゆっくりと顔を上げる。
「無理で御座るよ」
誰もが呆気に取られていた。
「教える前に飛び出して教えても理解しなくて人任せ。自分の立場をまるで分かっていない」
溜め込んでいた黒が、
「何が正義部隊だ何が秘密結社だ」
溢れ出す。
「声を上げて正義を掲げて目立つばかりで」
……止まらない。
「何も分かってない」
「ミカゲ」
「うんざりで御座るッ!」
止まらない──
「ずっと当たり前に一人でやってきたのにそうやって協力の姿勢を見せられて! おまいらが居なくてもこっちは何も困らないで御座るよ! 忍として暗殺者として何年やってきたと思っているので御座るか! 今更母数を増やされても足手纏いだし邪魔だし面倒臭いしッ!」
僅かに聞こえた誰かの声を遮るように。
「拙者には不要で御座るよッ!」
……仲間なんて。
「ミカゲ!」
視線を切るように自室に駆け込んで勢いよく扉を閉められてしまえば誰もが言葉を失っていた。
「ミカゲ……」
「あんな言い方しなくたっていいじゃない!」
眉を下げるバンジョーに対しカズーイは腰に手を当てながらむすっとした顔で。
「大丈夫でしょうか……」
「うーん……」
しずえとブルーは心配そうに扉を見つめる。