井蛙の教訓
自分でも焦りで青ざめているのが分かる。駆け寄った先でそれでも尚苦しげに笑みを口元に讃えるその人の肩は掠めたのではなく確かに撃ち抜かれている。貫通している。ミカゲは同じように片膝を付いて身を案じていたが鋭い視線を受けた気がして即座に振り返り目配せをした。
「ロックマン君……!」
「大した傷ではありません」
眉を寄せる男にロックマンは即答する。
「怪我は」
「い、いや」
「それは良かった」
ロックマンは微笑みながら、
「市民をお守りするのが我々の役目ですから」
……違う。
彼の発言を否定しているのではない。長くこの仕事に就いてきたのだから傷を見ればどの方角からどんな意図で受けたものなのかくらいはある程度想像が付く。まるでこの男を庇ったが故に負った傷だというように彼は言葉を交わしているがそうではない──弾痕から予測するに狙撃銃か。偶々かわざとかそれでも確実に獲物を捉えている辺り手足れである事に違いはない。
……そして。狙われたのは──
「ミカゲ」
現実に引き戻される。
「勘の良いお前なら分かるだろう」
心臓の音が。……静まっていく。
「……探し出せ」
静かに冷たく命令が下される。
「……御意」