井蛙の教訓
ふと。辺りは暗闇に包まれる。
「暗くて見えないぞ!」
「……停電のようですね」
扉を開ける音や困惑の声が入り混じる。通路だけでなく各部屋の電気まで消えたということは寮だけではなく司令塔全体が停電している可能性が高い。点検の話まで聞いていないともなれば次第に警戒心も高まってくる。
「、!」
僅かな音を耳で拾ったのはしずえだった。
「どうかしたか?」
「……下から」
気付いたミェンミェンが隣に立って訊ねるとしずえは片方の手を耳に当てながら。
「……会議室です!」
ざわつく。──会議室といえば今日は午後からコーチング会議を行うのだとロックマンが話していた。その実力や実績から教えられるより教える側だろうと誰しも心の中で突っ込んだことだろうが意味があるかどうかはさておき付き合いもあるのだろうと見送ったのだ。無論、一人で。
「……大丈夫でしょ」
とはいえ。あのロックマンである。
パックマンはほんの一瞬言葉を失っていたようだったがすぐにそういって小さく息をついた。緊急事態だったのだとしても相手が相手とだけあって寧ろ仕掛けてきた側が可哀想な目に遭うのは目に見えている。けれど何となくミカゲは一人胸騒ぎというものを覚えていた。
嫌な予感。
こういう時の勘は──よく当たる。
「、ミカゲ!」
駆け出す彼を誰も止めなかった。
「大袈裟っしょ」
「だから」
ルルトは顔を顰めながら。
「なんで一人で飛び出すのよ」