井蛙の教訓
スピカは深い溜め息を吐いて立ち上がった。
「行くぞ」
「はい」
「、スピカ」
背中を向けたが足を止める。
「守り切れると思うなよ」
「それで結構」
歩き出そうとして、
「お前の分まで払うとは言っていないが」
その背にロックマンが投げかける。
「報酬金から差し引いておけ」
一瞥くれて。
スピカは今度こそ──この場を離れた。
「ロックマン……」
ルーティは恐る恐る口を開く。
「本気なの……?」
「僕たちも説得はしたんだけどね」
今度ばかりは然程驚かなかった。近辺で待機していたダークシャドウの撤退を確認してやって来たのであろうマークが側に立っていたのだ。
「こうなると聞かないから」
ルフレが溜め息を吐く。
「相手は……ダークシャドウだよ」
ルーティは膝の上で静かに拳を握りながら。
「彼らは光を苦手としているけど敵に回したら暗闇が安全地帯ではなくなる……」
「徹夜なら慣れているからな」
「そ、」
そういう問題じゃ──
「これじゃからのう」
シラヌイはやれやれと肩を竦めた。
「一応、確認するんだけど」
ルーティは恐る恐る。
「フォーエス部隊だけで対処するんだよね?」
「君たちの手は煩わせないさ」
「や、そんな、いくらでも手は貸すけど」
「それでは部下の成長に繋がらない」
疑問符。
「試験でもやってるの?」
「そんなところだよ」
命懸けでやるようなことなのかな。
「とにかく」
ロックマンは立ち上がる。
「今日は助かったよ。ありがとう」
「う……うん」
「ルフレ、マーク。支払いは頼んだぞ」
「分かりました」
最後まで手の内が読めないままルーティはぽつりと席に取り残される。これ以上気にかけたところではぐらかされるんだろうし。物騒な案件だけど首を突っ込むとそれはそれで雷が落ちそう。
「帰らないのかい?」
あっ。
「……あはは」
支払いを任されたのでお帰り待ち。
「な……なにか食べる?」
「払うのは私たちよ」
「気分転換に!」
「いいね。なにを頼もうかな……」