井蛙の教訓



晴れ渡った青い空。澄んだ空気と柔らかな風。

ああなんて素晴らしい天気だろう!……


「おい」

現実逃避を掻き消す幼馴染みの声に。

そろそろと目を向ければ。

「いつまで待たせるつもりだよ」


レイアーゼ繁華街にある洒落たカフェテラス。これがまた少し外れにあるのと時間帯のお陰か人通りも少なく落ち着いて話すには打ってつけなのだといつか誰かが勧めてくれたのを覚えていたのがまさか役に立つ日が来るとは。

「あはは」

苦笑を浮かべて肩を竦めたのはルーティである。

「もう少しだと思う」
「だと思うって」
「どうせこの後予定ないでしょ」

溜め息を吐いたのはスピカだった。適当に注文した洋菓子は既に胃の中、飲み物も底をついていて話題もないのに繋ぎ止めるのがやっと。

「一応敵同士なんだぞ」
「知ってるよ」

そう返して微笑むのだから敵わない。

確かに自分たちはX部隊と亜空軍所属のダークシャドウという敵対する部隊のリーダーをそれぞれ務めている。けれどそれ以上に幼馴染みであり親友だ。幾ら声を荒げても拳を交えてもこれだけは決して違えない事実だった。

「俺は別にいーけど」

スピカは頬杖を付きながら自身の影をちらりと見遣る。釣られてルーティも覗き込んだ。


「こんにちは」


声がして。影が差して。

二人は同時にゆっくりと顔を上げる。

「もう食事は終えられたかな」
「──なっ」
「スピカ」

思わず立ち上がるスピカをルーティが呼んだ。

「お、お前が……会ってほしい相手、って」

わなわなと声を震わせる。

「落ち着きのないお客さまだ。……それとも」

その人は小さく微笑む。

「デートの邪魔をしてしまったかな」
 
 
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