井蛙の教訓



気付けば朝だった。

嫌な夢を見たとさえ思う──前髪をくしゃりと掴んで溜め息。ただの単なる昔の記憶を鮮明に表しただけの映像でしかなかったがそれでも今の自分には恐ろしく刺さるものだった。忍びの心得を教えてくれた叔父は片時も笑わない人でまるで氷のように冷たいオーラを纏って一切の干渉を受け付けなかった。それが子供ながらに近寄り難くて──けれど里一の実力を誇るその人は反して憧れの的だったのも確かだった。

思えば──忍びとはそういうものなのだと刷り込まれていたのかもしれない。時代は移り行くのに世界は変わっていくのに古い考えは次第に腐って嘲笑われるものなのに。……でも。だって。


間違いじゃないと思う。

今でもあなたは。自分の中で尊敬の。……


「いないよ」

ミカゲは扉を叩こうとして目を丸くした。

「出かけてるから」

淡々と話すハルから視線を外してもう一度見つめた先にはロックマンの部屋があった。単純に任務報告のつもりで訪れたのだが不在とは。

「報告は後日まとめてすればいいと思う」

そう言ってハルはその場を離れた。取り残されたミカゲは改めて扉をじっと見つめた後で。それもそうか、と冷静に思い直す。

「ミカゲ・クアトンッ!」

びりびり。

「やっと見つけたわッ!」

腰に手を当てて御立腹の様子の少女ルルト。

「今日の任務はこのルルトも共に請け負うわ!」
「ってぇワケだ。仲良くしてくれや」

騒音二号のラッシュ。

「誰が騒音だと言うのよ!」
「なななっナレーションに突っ込むのはNGで御座るううぅう!」
 
 
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