井蛙の教訓
──勘の鋭いヤツめ。
要望通りに彼らの動きに目を光らせていたが連れていた相手が相手なだけにいつうっかり凶暴な性質を制御するそれが取れて距離を詰められてしまうものかと冷や冷やした。慌てるなんて柄ではないが実際凶暴化する様子を目にした以上は意識せざるを得ない──そうして光の導くまま白い巨塔の四階、開け放たれていた窓に近付くと途端に高度が落ちた。想定していたより早い段階で光の加護を切らされたのである。まさか墜落とまではいかなかったがそのまま部屋の中へ滑り込むようにして着地をすると。
「……おい!」
「あらあら」
女神はいつもの調子で笑う。
「切れちゃったみたいですね」
「わざとだろ!」
「ブラピ」
そんなやり取りに口を挟んできた男がいた。
「……報告を」
そう。偵察していたのはブラックピット。
そんな彼を飛翔の奇跡を使って補助していたのはパルテナ。そして何よりこの偵察を依頼したのは他でもないロックマンだったのだ。
「どうもこうも」
ブラピは肩や膝を軽くはたいて。
「放っておいていいのかよ」
「……その様子だとあまり芳しくなさそうだな」
ロックマンは短く息を吐く。
「そうか……」