井蛙の教訓
難しい任務ではない──寧ろやり方さえ分かってしまえば彼らにだって熟せる事だろう。
「、よかった! わたしまだそういう怖いものを見る勇気がなくて……」
「私と同じですねしずえさん!」
じゃあ一体ここに何をしに来たんだと聞きたくなる彼女たちに幾ら簡単だからといって任せる気にはなれなかった。そもそも何度も繰り返し心の中で自負しているように今まで一人で平気だったのだからこれからだってそれで問題は。
「お」
スティーブが声を上げる。
「キッチンの明かりが点いたみたいだぜ?」
動きがあったようだ。
「拙者の後に続くで御座る」
上手くいけば送り先の病院で本妻と遭遇する形となり不倫相手の女性もまさか自分を殺そうとしたのではと政治家の男に疑いの目を向ける。そうなればトントン拍子に全ての悪事を責め立てられることだろう。そうして味方を失えば表舞台に上がらざるを得ない。そこまで導けば役目は終わり。後は他に任せても問題ない。
「オレにも何か出来ることはあるか?」
スティーブが訊ねた。
「、えっと」
こういうのは正直対応に困る。
「私も。何か簡単なことでも構いません」
「見てるだけというのは申し訳ないですから」
積極的なのは有り難いことなのだが。
「し、侵入経路を覚えるところからで御座るよ」
苦しいながらも軌道をずらした。
「それもそうですね」
「わたし当ててみます!」
しずえはじいっと隠れ家を見つめて。
「裏口ですか?」
「ハズレで御座る」
「窓!」
「あるあるで御座るなぁ」
「煙突!」
「サンタクロースかな?」