井蛙の教訓



……。

…………。


夜になりました。


「い……良いで御座るか」

場所は変わって今度の標的の隠れ家近辺。

「あくまでも見てるだけで御座るよ」
「了解了解」

そう返すのは褐色肌に髭面の男。

「……ところで観客席は何処にあるんだ?」
「ないで御座るよ!?」

任務に同行するのはしずえ、ブルー、エンダーマンの他にもう一人──スティーブが居た。

昨日とは打って変わって非戦闘員ばかりの編成である。まあ昨日は異例の合流といったところだったので予測不能な事態の連続に精神的にも疲れてしまったが今回は大丈夫そうだ。

「ハッハッハ! 冗談さ!」

……多分。

「今回の標的は政治家の方ですね」

持参したノートパソコンを手に画面を見つめるブルーの表情は昼間と一転して冷気を感じる。

「パワーハラスメントに不倫。事務員や秘書に対する給料未払いなど罪を重ねているにも関わらず上層部はこれを黙秘。金や権力に守られて世間に取り上げられないどころかひと度触れれば揉み消される始末。被害者の家族からの被害報告も何故か指で数える程度で且つ未解決。命を奪うまでの話でなかったとしても制裁は受けるべきです」

ミカゲは頷く。

「左様。今回の任務の目的は標的を如何にして表舞台に引き摺り出すか」

遣り様は様々あるが無難なのは彼にとって動かざるを得ないという状況を作り出すこと。今現在彼は隠れ家で何も知らずに不倫相手の女性と呑気に夜を過ごしていることだろう。

「どうするんだ?」
「不倫相手の女性に毒を仕込むで御座る」
「おいおい」

スティーブは目を丸くする。

「もちろん死には至らない微量の毒で御座るよ」
「なるほど……それで病院送りにさせて奥さんと鉢合わせさせるわけですね?」
 
 
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