井蛙の教訓
「じ、冗談キツいで御座るよー」
いつものように。苦笑いを浮かべて両手を挙げながら。その様子にマークがほっとする一方でリドリーは黙って見つめていた。そうして何が気に食わなかったのか大きく舌を打つと。
「あ」
ミカゲの肩を掴んで壁側に荒く押し退けて。
「リドリー!」
自室と思われる扉の奥へ。
「……大丈夫かい?」
「あはは」
心配そうに身を案じるマークを相手にミカゲは眼鏡を掛け直して肩を軽く払う。
「大丈夫で御座るよぉ」
駄目だな。……油断すると。
……今みたいに。
「はぁー」
自室に戻って大きく息を吐き出す。
今日も明日も明後日すらも隊長の粋な計らいにより一週間全て誰かと任務を行う手筈となってしまっている現状に憂鬱というものを抱いた。昨日が昨日だったのだから先行きが不安になるのも当然の話だが。スケジュールを無視して一人で熟してしまえば信用問題に関わってくるしそうまでして仕事を独り占めしたいのか、輪を乱したいのかとまで聞かれると流石にそこまで性格の悪い行いはする勇気が。……
「、?」
視界の端に黒い影。
「ほぎゃああぁあっ!?」