偽りの天使
「くっ」
背中に重量感。
「う、わ」
海面にちらちらと映る自分の姿に声が洩れた。
……羽根だ。真っ白い、仄かに青白い光を宿す大きな羽根。
「ちょっ」
傍らで水飛沫が上がった。
「おま、高度高度!」
どうやら自分は飛んでいたというよりも滑空をしていたらしい。羽根も動かさずにぼうっと海面に映り込む自分の姿に見惚れていたところ、脇下から抱きつくような姿勢だったロイの片足が海面に一瞬突っ込んだ、と。
「注文が多いなぁ」
「仕方ないだろ。飛べねえんだから」
最もな返答に笑みがこぼれる。
「ピット」
怪訝そうに視線を返す。
「飛べるよな」