偽りの天使
……ああ。そうか。
ボクは飛びたかったんだ。
なのに。信じることができなかった。
心の中で見下していた。
お前はどうせ、飛べないんだって。
「ぁ」
本当は誰よりも憧れていた。
飛びたかったのに。
ずっと、悔しかったのに――
「……信じるのが怖いって気持ち」
ロイは胸ぐらを掴んでいた手を離して。
「今まで、たくさんの人がそうだったから分かる」
それまで腕を握っていた手を滑らせ、共にピットの手を包み込む。
「物好きな奴がいたんだ。そいつはどんなに拒んでも、突き放しても。領域に踏み込んで、手ぇ伸ばして捕まえて外の世界に引っ張り出した」
力を込める。
「だからそいつがやってきたことを」
くっと眉を寄せて。
「今度は俺がしたいんだよ!」
じわりと滲む。
「お前が、自分を信じられないってならそれでいい」
絡みついていた拘束の糸が解ける。
「でもお前は飛べる。俺が知ってるから。信じてるから」
だから。
ロイは真っ直ぐな瞳で見据えて叫ぶ。
「お前は俺を信じろ、ピット!」