偽りの天使
くっと顔を顰めた。
「……ふ」
返す。
「ふざけんな!」
ピットは目を開いた。
「そうやって納得のいかなそうな面して、何が限界だ!」
ロイはもう片方の腕を伸ばして胸ぐらを掴む。引き寄せる。
「飛びたいんだろ!」
迫る。
「お前が落ちるところだって」
訴える。
「寂しそうに空見上げてたことだって全部見てきたんだ知ってるんだよ!」
「ロイには分からないよ!」
「じゃあお前は分かってたのかよ!」
ざわつく。
「飛びたいのに! “どうせ飛べない”って、そこで堰き止められていたお前自身の気持ち分かってたのかよ!」
――ドクン。
「飛べない事実と向き合うのが怖かったんだろ。でもそれだって“自分”だろ!」
ロイは力の限り叫んだ。
「自分を信じなくてどうするんだよ!」