偽りの天使
……ああ。
ボクはもうすぐ。海面に叩きつけられて。
壊れて、沈む。深い海の底へ……
「ピットー!」
ゆっくりと瞼を下ろして視界を殺した、その時だった。
声に呼ばれて、うっすらと開く。逆光が邪魔をしてそれが何か分からなかった。
……分かってからも、信じられなかった。
「え」
だって、ここは。
空なのに。
「……ロイ?」
視界の端で愛弟子が落ちるのを見た。
落とされたのではない。自ら、だ。
「っ、く」
叫ぶ余裕もなく、攻撃を剣で受け止める。
「よそみしてたらあぶないよ?」
少年はそんなことなど気にも留めず言った。
「かめんきしさん」