偽りの天使



……ああ。

ボクはもうすぐ。海面に叩きつけられて。


壊れて、沈む。深い海の底へ……


「ピットー!」 


ゆっくりと瞼を下ろして視界を殺した、その時だった。

声に呼ばれて、うっすらと開く。逆光が邪魔をしてそれが何か分からなかった。


……分かってからも、信じられなかった。

「え」

だって、ここは。


空なのに。


「……ロイ?」


視界の端で愛弟子が落ちるのを見た。

落とされたのではない。自ら、だ。

「っ、く」

叫ぶ余裕もなく、攻撃を剣で受け止める。

「よそみしてたらあぶないよ?」

少年はそんなことなど気にも留めず言った。

「かめんきしさん」
 
 
88/110ページ
スキ