偽りの天使



……目を開くと。

そこにいたのは自分だった。


「あの人の何を知ってるんだ?」

やけに響く。

「意図も何も知らない。世界のために女神さまの意思に従って」

響く。

「そこに自分の意思はあったのかなぁ」

頭の中が吸い出されるように。

「翼をもぎり取れば傷口から溢れ出して」

軽くなっていく。

「堰き止めていた使命感や責任感なんかが流れ出て」

白くなる。

「途端に中身のない空っぽの器になる」

分からなくなる。


「――偽物はどっちだろうね」


はっと顔を上げて薙ぎ払いを避けた。次の一撃は上手く弾いた。

蹴りを潜り、返しは大きく仰け反って躱す。後方に足を一歩置いたが踵が不自然に踏み外して体が跳ねた。

後ろを振り返る。そこには。


空との境目がない広大な青の世界――
 
 
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