偽りの天使



心臓が。

「……それはね」

胸の内から。

「あんたという逸材を」

……ゆっくりと。

「いつまでも自分の手元に置いて」

鈍く。強く。

「利用するため――」
「やめろッ!」

ピットは声を荒げた。

「そんなのデタラメだ!」
「どうして言い切れるのかなぁ」

心臓がうるさい。

「上司の女神さまはお前を人間の世界から拾ってきて、雲の上の世界に馴染ませるために、役割を理解させるために背中に羽根を植え付けた。飛べないのだって当然じゃないか、紛い物なんだから」

ざわつく。

「じゃあ翼が無くなったら?」

淀む。

「利用(コントロール)できなくなる」
「……違う」
「繋がりが断たれる」
「パルテナ様はっ」
「不要になる」
「そんな人じゃない!」 

その顔はニィ、と笑った。

「……どうして?」
 
 
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