偽りの天使
ピットはくっと眉を顰めて力強く押し返すと、その場で軽く跳んで交差した相手の双剣、その中央を蹴り、バネのように後方へ跳んで後転し着地した。一瞬体勢を崩されたダークピットだったが、即座に構え直した辺りどうってことないようだ。
「……その羽根、どうすんの?」
ダークピットはかくんと首を傾ける。
「マスター様とクレイジー様なら直せるかもしれないよぉ?」
「断る! お前たちに頼るなんて死んでも御免だ!」
はたと笑みが止んだ。
「……じゃあ、いらないねぇ」
ぎくりと目を開いた時には、もう。
「っうぁ」
慌てて構えたが一方を弾かれてしまった。残された右手の剣で払うとダークピットはひらりと躱し、後方に飛んで。
「……さっきも言っただろ? 意味がないのは、お前の方」
ピットは遠く突き刺さる片割れの剣を見て、きっと睨む。
「そんな言葉には騙されないぞ!」
ダークピットはニタニタと笑っている。
「何がおかしい!」
「あんたの上司の女神さま」
――ドクン。
「なんで飛べない天使のお前を、親衛隊の隊長なんかにしたんだと思う?」