偽りの天使



「つかまえた」

その声に、気付いた頃には遅かった。

ずる、と左足を引かれて保ってきた体勢を崩される。ぱっと視線を落とせば左足に金の鎖が二重に絡みついていた。一体何処から――そう思い視界を探っていると、なんとその鎖はその下の虚空の切れ目から飛び出していたのだ。

見比べるように、上へと遠ざかる少年を見る。突き出した拳じゃない、もう片方の手が横に伸びてそれで――見切れている。

ああ、そう、空間を。


……何でもありってこと。


「ぐっ」

速度を増して、左へ。軌道を変えて引っ張られる。

それをどうにかする術は今、ない。

「っ、」

解放された。

かと思うと次の瞬間。


――声もなく。


鳩尾に強烈な一撃を受け、飛ばされたが右足に鎖が絡み付き、引き止めて。

呆気なく、宙ぶらりん。意識こそ手放さなかったが、視界がぐらりぐらり揺れる。

「ばいばい」

笑み浮かべた少年の背後に魔法陣が浮かんだ。
 
 
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