偽りの天使
ネロ、と呼ぼうにも彼自身返事のできる状況ではないと即座に見抜けた。
左半身にぶつかってきた彼の体は、此方から支えなければ墜落してしまうであろう程にはぐったりとしていて、原因もひと目で分かる――だって、血が。
「こわれちゃった」
はっと顔を上げる。その先で少年がにこりと笑った。
「だから、かえしてあげる」
……なんでこいつ、無傷なんだよ……!?
「フォックス、アーウィンを!」
レッドが言うと攻撃の隙を見てフォックスはアーウィンを翻した。完全に空中に留まり、回収することは敵わない。ほんの少し距離を詰めるその隙にレッドは自身のベルトに備え付けてあったモンスターボールを手に取って、突き出す。
「――戻れ!」
ボールの中心から放たれた一線の赤の光がネロの体をたちまち包み込み、どういう原理か光共々ボールの中へ。レッドはそのボールを見つめて、
「ごめんよ、ネロ……」
本当に辛そうに、眉を顰めてぽつりと言った。