偽りの天使
こういうのって大体、壁に掛けられている剣とかに背中を向けて縄を削ったりするんじゃ……あれ、ひょっとしてこれ見つけたのって無意味?
「俺が切ってやろうか?」
「わーい、じゃあお願いしま」
誰だお前。
「なかなかいい反応をするな」
ずさぁっ、と勢いよく引き下がって距離を取ったところ、少年はその隙にひょいとダガーナイフを拾い上げた。くるっと器用に回して見せて笑み。
「お友達が待ってるんだろう?」
や、本当に誰だこの人。
不審に思いながら背中向けて切ってもらってる自分もどうかとは思うけど……
「お前、天使か?」
びくっと肩を跳ねさせる。
「ま、まあ」
「随分と派手にやられたな」
少年は縄を切り落とした後で同時にダガーナイフを手放すと、翼にそっと触れた。
「可哀想に」
カラン、とダガーナイフが床を打つ。
「これじゃもう二度と、空を飛ぶことは敵わないだろうな」