偽りの天使



ボクの、羽根。

扉が閉まった後で咽び泣く。だって分かるんだ。鏡で映し出さなくても自分の翼がどんな状態であるか。辺りに散らばった羽根と痛みが、それを証明している。


どうしよう。

……罰が当たっちゃったんだ。


飛べなくたってこの羽根は誇りだったのに。

ボクの、誇りだったのに。


「……っ」

泣いていたってどうにもならない。

ロイを探さなきゃ。ピットはのっそりと体を起こすと改めて辺りを見回した。血と羽根がちらつくが気に留めていられない。……見たところ、どうやら此処は武器倉庫のようだった。武器といっても主は大砲や銃器といったもので、両手を拘束する縄を解くには少々どころか適さない。出来ればナイフとか欲しいんだけど。

ふらり立ち上がって、たまたま目についた開け放された段ボールの中を覗き込む。拳銃、鉄球、火縄などなど。求めた刃物類は見当たらない。それでも奥にならあるかもと微かな期待を胸にピットは足で蹴って段ボールの中身をひっくり返した。

「……!」

ダガーナイフ。

……ようやく希望を掴めたが、これ。どうやって使おう……?
 
 
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