偽りの天使
伸びた手が右翼を鷲掴む。
「っ、痛」
抵抗できない。
「いやだ……嫌だ、やめ」
みしみしと付け根が悲鳴を上げている。
「いた、ぁ、ア」
視界がじわりと滲んだ。
「ピット」
はっと目を開く。
「外……凄いことになってるみたい……」
ダークピットは少しの間黙っていたが、遂にぱっと手を離した。
「はぁい。今行くよー」
既の所で解放されたのだ。
「……命拾いしたねぇ」
返す気力もない。息を弾ませて横たわる。
「帰ったら続きをしてあげる」
ダークピットは扉へ向かう。
「……だから」
くるっと振り向いて笑み。
「逃げないでねぇ?」