偽りの天使
ボクの、羽根が。
「ぁ」
……引き千切られて。
「おっと」
体を強く揺すればその男は存外あっさり離れた。すかさず振り返って睨みつけたが予想通りの形だ。自分と瓜二つ、けれど髪は黒く肌は褐色、特徴的な赤の双眸。
……ダークピット!
「そんなに熱くなることないんじゃない。意味なんてないんだから」
くっと顔を顰めて奥歯を噛み締める。
「意味がないなら……なんでこんなことをした!」
ダークピットはにやにやと笑って見下ろしている。
「答えろ!」
次の瞬間だった。
ピットは頭部を蹴られ、床にうつ伏せになったところ頬を足で踏み付けられたのである。両腕は後ろに回された上で縄によって括られており、抵抗ができない。
「うるさいなぁ」
ダークピットはぐっと足に力を加えた。
「意味がないのは、お前の方」
呻き声が小さくこぼれる。
「宝の持ち腐れって知ってるぅ?」
かくんと首を傾けて。
「飛べない天使が持て余してバッカみたい。だったら」
足下の少年を見下し言い放つ。
「……俺が貰ってやるよ」