偽りの天使
そんなの、ボクが聞きたいよ。
ボクが飛べないってことはさっきだって充分に証明されたじゃないか。
なんで、聞くんだよ。
「いやそうじゃなくて」
言い訳なんか。
「ッ、」
ロイははっと目を開いた。
「ピット、屈め!」
突然の展開にきょとんと立ち尽くした。
「……え?」
ぐらりと傾く視界。鈍い音。
血。
「ロイ!」
咄嗟に飛び込み、庇ったのだ。ピットは無傷で助けられたが、対するロイは頭から少量の血を流している。それがどんなに軽い一撃だったにせよ頭をやられたのだ。ロイの体は思いの外ぐったりとしてしまっていた。
「やっぱり」
赤の巨体を誇るンガゴグの後ろから、そっと覗き込む影がひとつ。
「誰か……居たんですね……」